どうやっても思い出せなくて仕方なくファイルの中のaから順番に探して行くと、見つかったタイトルの頭文字はw。
最後の最後やん。
どうして思い出せなかったんだろう~。
逆さまから探せば良かった~。
続きから第三話です。
「流行り病3」
ポケットの缶詰めのせいで、一歩歩くごとにボコボコと足に缶が当たって非常に具合が悪い。
明神は不機嫌な顔でうたかた荘に向かった。
まあでも、これを冷やして今晩風呂上りにでも姫乃と…と考えればまだ前向きになれる。
ビニール袋くらいくれりゃあいいのにと思いながらも、玄関まで辿り着いた。
「ただいま~。」
言いながら玄関をくぐると、直ぐ目の前の廊下に姫乃が立っていた。
「あれ、ひめのん。ただいま。」
「…。」
姫乃は背中を向けて、壁に体をあずけている。
「…どうかした?」
心配になって明神が側に寄ると、姫乃はくるりと振り返った。
両手で頬を押さえている姫乃の顔は、明らかに真っ赤になっている。
「おかえり…。なんかね、明神さんが出てからこう、顔が何か熱くて。でも何か寒くて。」
ぼおっとした顔で言う姫乃の目は涙目になっている。
「ちょっと、ゴメン。」
明神が姫乃のおでこに手を当てると、「ジュウ」と音がするかと思う位熱かった。
「…ひめのん、これ風邪じゃねえ?」
「え!嘘!私は大丈夫だと思ってたのに!!」
その自信は何処から来るのか。
「病院行った方がいいなあ。ひめのん送るし、用意してきなよ。」
「え、病院?いいよ!そんな大した事ないし…。」
「大した事ない人間が、歩きもしないで壁によっかかったりしないだろ?」
自分が怪我をした時は病院に行きたがらないけれど、姫乃が風邪をひけば病院へ行けと勧める。
姫乃は「自分は行かないくせに」と思いながら。
「あ、でも駄目。」
「何で。」
「時間。もうやってないよ今日。」
「…病院って、夜はやってねーの?」
「時間にもよるけど…。もう七時過ぎちゃってるし。終わってるよ。」
「ええと…じゃあ薬局!薬買ってくる!熱は?」
「あると思う。フラフラする。」
「喉痛い?」
「ううん。」
「お腹痛い?」
「ううん。」
「ええと…頭痛い?」
「ううん。何か、しんどい。」
自分が風邪だと認識すると、とたんに人間弱くなる。
姫乃はへなへなと座り込んだ。
慌てて支える明神。
「エッちゃんが言ってた症状と一緒だあ。目が回る…。」
「と、とりあえず寝とけ、な?」
明神はひょいと姫乃を抱えて持ち上げた。
「わ…ちからもち。」
えへへえ、と笑う姫乃。
「笑ってる場合か。」
トントンと階段を上る。
「気合…。」
「ん?」
「気合足りなかったかなあ~。」
昼頃の会話を思い出す。
そういえば、そんな事を言ってしまった気がする。
「いや何つーか…。ほら、別にひめのんが気合無いから風邪ひいたとかじゃなくてね。」
「でも馬鹿じゃなかった~。」
「やかましい。」
両手が塞がっていたので軽く頭突きして抗議の意を表してみる。
ぶつかったおでこが熱くて驚いた。
姫乃はかまわずえへへと笑う。
ふざけるのはここまで。
明神は黙って軽い体を姫乃の部屋に運び、布団を敷いてやると寝かしつけた。
4に続く